早稲田大学 演劇博物館 演劇研究センター 21世紀COEプログラム 演劇の総合的研究と演劇学の確立
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年間活動報告 アーカイブ構築研究(演劇)

研究概要 活動報告 2002 2003 2004 2005 2006 2007
T.概要
「アーカイブ構築研究コース」では、演劇研究センターにおける研究活動の基礎となるべく、演劇博物館所蔵資料のデータベース化・デジタルデータ化を進め、その過程で生じる問題点について、演劇資料としての特性や研究における使用方法などを勘案しながら、解決を試みている。演劇博物館所蔵資料はジャンルも多様で、点数もきわめて多いため、短期間で完了しうるものではないが、3 年目を迎えて、まとまったものから順次サーバ上で公開している。
現在は、以下のようなプロジェクトを立ち上げて作業にあたっている。

1.「役者絵研究会」プロジェクト(2004 年3 月末日まで)
2.「浄瑠璃稀曲データベース化の研究」プロジェクト
3.「デジタル・アーカイブ研究」プロジェクト
3-1.近代演劇上演記録データベース構築
3-2.現代能楽・狂言上演記録データベース構築
3-3.検閲台本デジタル化
3-4.東京新聞データベース
3-5.絵本番付画像データベース構築

■担当者
<教員>
和田 修 (早稲田大学文学学術院助教授)
アントニー・マーティン (早稲田大学文学学術院助教授)
冬木 ひろみ (早稲田大学文学学術院助教授)
貝澤 哉 (早稲田大学文学学術院教授)
乾 英一 (早稲田大学国際教養学術院教授)


U.プロジェクト別活動報告
1.役者絵研究会(2004 年3 月末日まで)
1.活動の概要
演劇博物館所蔵の役者絵について、演劇資料として、演劇史・絵画史の知見をふまえた総合的な考証をおこない、データベース化をすすめる。

2.活動内容
@未入力基礎データの入力 
WEB 上で検索するための基礎的項目を入力した。
・入力対象   新規受入資料、絵師別分類のうち「周延」・「その他の絵師」の作品
・主な入力項目  画題(画中の文字)/役名・役者名/位置(並び順)/絵師名
・入力件数  約300 件

A未考証役者絵の考証・入力
上記の基本的事項の確認に加え、種々の歌舞伎番付、役者評判記、台帳等を参照して年代考証をおこない、「どの演目のどの場面を描いたものか」までを特定。それぞれの役者絵について厳密な考証・検討を加え、成果をデータベースへ入力した。
・対象 初代歌川豊国の作品
・主な入力項目
画題(画中の文字)/役名・役者名/位置(並び順)/絵師名/版元印/版元名/落款印章/彫師/改印(検閲印)/所蔵印/刊行年月・上演年月日/地域/劇場/外題/外題よみ/場順/場名/所作題/所作題よみ/音曲の種類/系統分類/解説
・入力件数 約50 件

B役者絵研究会例会の開催
上記考証成果の報告・確認の場として、2003 年11月から2004 年3 月まで、2 月を除く、計4 回、演劇博
物館において例会を開催した。

2.浄瑠璃稀曲データベース化の研究

1.活動の概要
義太夫節および古浄瑠璃の現存する稀曲のデータベース化とそれにもとづく研究をおこなう。おもな研究対象として、昭和47 年に本学文学部演劇専攻(当時)が新潟県佐渡において収録した文弥浄瑠璃のオープンテープ、および内山美樹子教授収集の義太夫節稀曲のオープンテープをデジタル化し、WEB 上での検索・視聴(著作権保護機能付)を可能にするための基礎研究をおこなう。
2.活動内容
@ 内山美樹子教授収集義太夫節コレクションのデジタル音源の確認・分析・データ入力
・入力項目
演目/場名・段名/演奏者/録音年月日/備考/編集指示
・入力数 CD-R 約50 枚分

A佐渡文弥節録音資料
・ 昭和47 年採集資料について、演劇博物館助手の田草川みずきが引き続いて内容調査をおこない、本紀要に「早稲田大学演劇博物館蔵 佐渡古浄瑠璃録音資料目録(2)」として報告している。

B文弥節人形浄瑠璃の伝承研究
・ 2004 年6 月12 〜 13 日および8 月27 〜 31 日に佐
渡に赴き、伝承状況の確認、現地公開の見学、聞
き取り調査などを実施した。

3.デジタル・アーカイブ研究
3-1.近代演劇上演記録データベース構築
1.活動の概要
本プロジェクトでは、演劇博物館所蔵の戦前(大正元年〜昭和15 年頃まで)の上演資料を基に、近代演劇の上演記録データベースを構築することを目的とする。
2.活動内容
基礎的作業として、昨年度に引き続きプログラム・ちらし等の上演資料について、年代・演目・劇場等のデータを中心に考証・分類した。また、整理・分類作業と並行して、前年度に検討したデータベースの基本項目について、さらに改訂を加えた。データ入力作業については、現在データベース科研で行なっている(入力件数は約180 件)。
・考証・分類作業点数:約250 点(概算)
・近代演劇上演記録データベースの基本項目(暫定)
〈上演IDno.〉
上演主体IDno. /種別番号/上演年/上演月/月内小番号
〈上演情報〉
上演主体名/上演主体名よみ/団体名/団体名よみ/ジャンル/演目/演目よみ/初日/終日/場所/場所よみ/作者/作者よみ/演出/演出よみ/振付/振付よみ/訳者/脚色/備考
〈資料情報〉
ちらし/筋書・プログラム/番組/チケット/ポスター/写真/台本/その他/資料備考
〈入力情報〉
寄贈者名/入力者名/業務備考/入力年月日/最終更新日

3-2.現代能楽・狂言上演記録データベース構築
1.活動の概要
本プロジェクトでは、演劇博物館所蔵の現代(大正元年以降)の能楽・狂言に関する上演資料を基に、能・狂言上演記録データベースを構築することを目的とする。
2.活動内容
基礎作業として、前年度に引き続き、数多ある演劇上演資料から能楽・狂言に関する上演資料を分類するための整理作業を行った。また、整理・分類作業と並行して、前年度に検討したデータベースの基本項目について、さらに改定を加えた。データ入力作業については、現在データベース科研で行なっている(入力件数は約430件)。
・ 分類作業点数:約600 点(内、能・狂言上演資料は 約200 点。概算)
・ 現代能楽・狂言上演記録データベースの基本項目
(暫定)
〈上演IDno.〉 
能・狂言上演主体IDno. /種別番号/上演年/小番号(入力順)/公演内小番号
〈上演情報〉
上演主体名/上演主体名よみ/演目/演目よみ/小書/小書よみ/公演日/場所/場所よみ/シテ/シテよみ/ワキ/ワキよみ/ワキツレ/ワキツレよみ/ツレ/ツレよみ/アイ/アイよみ/子方/子方
よみ/アド/アドよみ/小アド/小アドよみ/笛/笛よみ/小鼓/小鼓よみ/大鼓/大鼓よみ/太鼓/
太鼓よみ/作者/作者よみ/流派/能・狂言別/備考
〈資料情報〉
ちらし/番組/プログラム/文書/チケット/ポスター/写真/その他/資料備考
〈入力情報〉
寄贈者名/入力者名/業務備考/入力年月日/最終更新日

3-3.検閲台本デジタル化
1.活動の概要
ミシガン大学から1985 年頃演劇博物館へ移管された総数約8,000 点の九州地方巡業劇団の検閲台本を分類整理し、主要ページをWeb 上で閲覧可能にするためのプロジェクトである。
2.活動内容
主要な作業は2003 年度で終了し、2004 年度はWeb 上で公開するための準備作業を行った。

3-4. 東京新聞演劇記事データベース
1.活動の概要
演劇博物館が所蔵している1944 年から1998 年1月までの「東京新聞」芸能記事を画像データベース化し、検索可能にする計画である。
2.活動内容
現在、1998 年1 月から1997 年3 月半ばまでの10 ヶ月半分のデータ4952 件の入力を終えた(データ入力は年月日を遡及する形で入力を進めている)。当初の予想よりもはるかに大量のデータ数となる事が判明したので、今後の作業効率をあげるため、データ入力の項目の見直しや訂正など修正や改良を検討中であ る。また、主要記事のデジタル入力を平行して進めるため、入力のサンプリング作業も順次行ってゆきたい。

3-5.絵本番付画像データベース構築
1.活動の概要
演劇博物館所蔵の絵本番付について、画像データベースを作成し、Web 上で閲覧可能とすることを目的とする。
2.活動内容
演劇博物館が旧来より所蔵している絵本番付は、重複分を除いてほぼ全冊のデジタル撮影が終了し、現在Web上での公開に向けて最終的な調整を行っている。この他、早稲田大学COE 演劇研究センターでは、昨年新たに755 冊の絵本番付を購入した。
演劇博物館貴重書データベース、あるいは『歌舞伎絵尽し年表』(須山章信・土田衞編、桜楓社刊、1988 年)等を参照し、年代考証をした内訳は下記のとおりである。また、全資料の上演年月日/場所(座名)/座元/外題/丁数などの簡易データは既に入力済みである。
寛政期24 冊・宝暦期37 冊・明和期27 冊・安永期59 冊・天明期69 冊・寛政、享和期69 冊・文化期116 冊・文政期78 冊・天保期110 冊・弘化、嘉永期86 冊・安政期以降75 冊・年代不明5 冊
2004 年度中に755 冊の撮影が完了する見込みである。
(文責・和田 修)

4.公開研究会「占領期の演劇と検閲」U
『GHQ の歌舞伎検閲』
日時:2003 年11 月28 日(金)18:00 〜 19:30
場所: 早稲田大学西早稲田キャンパス6号館3階レクチャールーム
講師: ジェームズ・ブランドン氏(ハワイ大学演劇学部教授)
司会:児玉竜一氏(東京文化財研究所研究員)

占領下の演劇検閲に関する2回目の公開研究会として、歌舞伎に対するGHQ の検閲について多くの関係者への取材・一次資料調査・文献調査を重ねてきたジェームズ・ブランドン氏(演劇博物館訪問研究者)を講師に迎えお話をうかがった。

GHQ が示した検閲コードに従うと、忠君、敵討など伝統的封建思想にもとづいた多くの歌舞伎演目は上演が許可されないことにもなるが、実際には「勧進帳」「熊谷陣屋」など当然上演不許可となるはずの演目が上演を許可されている。ブランドン氏は上演不許可演目リストと実際に上演解禁された演目との対照調査などにより、占領下の歌舞伎検閲の実態を研究されており、本研究会では特に検閲官バワーズ登場以前の歌舞伎検閲の実態に関して具体的な資料をもとに話が進められた。戦後占領期の演劇検閲とりわけ歌舞伎検閲を考えるとき、「歌舞伎を救った男」としてフォービアン・バワーズがまず頭に浮かぶが、ブランドン氏は、バワーズの果たした役割を認めつつも、歌舞伎を救ったのは必ずしもバワーズだけではないという。

まずCIE(民間情報教育局)およびCCD(民間検閲支隊)の組織編成と役割、および検閲官の配置について組織図を見ながら概略を確認した後、CIE のちにCCDが主に担当した歌舞伎検閲の話に入った。1945 年末に松竹・CIE・CCD 合議により作成されたとされる上演可・不可台本リストによると、総計149 の歌舞伎演目のうち上演不可とされているものは70 あり、一般的に考えられているよりも上演不可演目の数が少ないという。また上演許可台本の公演を年代別に見ると、バワーズが東京地区CCD に着任する1947 年1月以前にも上演許可とされた演目が存在しており、さらに東京を含めた各地区の検閲官別の許可台本数を見ると、必ずしもバワーズが許可した演目数が突出しているわけではないことがわかる。少なくとも記録の上ではバワーズ以外にも複数の検閲官が許可を出していることになる。質疑応答では、今回取り上げた大都市での商業演劇に対する検閲と地方演劇に対する検閲では検閲の実態について違いがあったかとの問いに対し、名の売れた役者が出演する大劇場での商業演劇はコードに触れる内容であっても特別に上演が許可されたが、地方劇団が上演する演目では検閲コードが原則どおり適用され上演不可となる例が多かったという見解が示された。
(文責・山本浩幾)

5. 公開シンポジウム「パフォーミング・アーツ・アーカイブの現在」
日時:2004 年10 月30 日(土)10:30 〜 17:45
場所:早稲田大学国際会議場第一会議室
主催: 早稲田大学21 世紀COE プログラム演劇研究センター/慶應義塾大学デジタルアーカイブ・リサーチセンター
共催:アート・ドキュメンテーション研究会(JADS)
協力: 文化資源学会/日本アーカイブズ学会/記録管理学会/日本ミュージアム・マネージメント学会/音楽図書館協議会/国際音楽資料情報協会日本支部

プログラム:
総合司会 柳井 康弘(慶應義塾大学アート・センター)

10:30 〜 10:40 開会挨拶 高山 正也(慶應義塾大学文学部・JADS 会長)

<第1部 個別発表>
10:40 〜 12:10
坂本 麻衣(早稲田大学演劇博物館)
 「上演記録データベースについて」
村井 丈美(慶應義塾大学アート・センター)
 「土方巽アーカイブ「舞踏譜」解析支援ツール開発の試み」
八村 広三郎(立命館大学情報理工学部)
 「モーションキャプチャによる無形文化財のデジタルアーカイブ化」

<第2部 基調講演>
13:35 〜 14:30
 ジャクリーン・デービス(ニューヨーク・パブリック・ライブラリー(NYPL)舞台芸術図書館 館長)「NYPL 舞台芸術図書館の現状と課題」
<第3部 パネルディスカッション>
14:50 〜 17:40
モデレーター 松下 鈞(JADS)
パネリスト ジャクリーン・デービス、八村 広三郎、桜井 弘(日本芸術文化振興会 国立劇場)、前田 富士男(慶應義塾大学アート・センター所長・文学部)、和田 修(早稲田大学文学部)
ディスカッションT「表現を記録する」
問題提起:和田 修/八村 広三郎
コメント: 前田 富士男/ 桜井 弘/ ジャクリーン・デービス
ディスカッションU「アーカイブとデジタル化」
問題提起:桜井 弘/前田 富士男
コメント: 八村 広三郎/ 和田 修/ ジャクリーン・デービス

海外からニューヨーク舞台芸術図書館館長のジャクリーン・デービス氏、国内から研究上あるいは職務上「パフォーミング・アーツ・アーカイブ」に関わる方々を講師に招いて公開シンポジウムを行った。本シンポジウムの目的は、舞踊や演劇といった形に残らない表現を記録することと、表現に付随して生み出される資料の保存・活用などを、「アーカイブ」という視点から捉えなおすことである。
アーカイブが舞台芸術活動に対し担いうる役割が何であるのかを探ると同時に、上演や動作を記録し資料化していくこの分野の特殊性をふまえながら、記録することのあり方について活発に情報交換・議論が行われた。当日は100 名を越す参加者があり、本テーマについて関心の高さをうかがい知ることができた。内容詳細について別途シンポジウム報告を作成する予定である。
(文責・山本浩幾)



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