早稲田大学 演劇博物館 演劇研究センター 21世紀COEプログラム 演劇の総合的研究と演劇学の確立
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年間活動報告 アーカイブ構築研究(演劇)

研究概要 活動報告 2002 2003 2004 2005 2006 2007
1. 役者絵研究会
(1) 未入力基礎データの入力
WEB上の検索対象となり、所蔵確認を可能にするための基礎的項目を入力した。
・入力対象 新規受入資料、絵師別分類のうち「周延」・「その他の絵師」の作品
・主な入力項目 画題(画中の文字)/役名・役者名/位置(並び順)/絵師名
・入力件数 約1070件

(2) 未考証役者絵の考証・入力
上記の基本的事項の確認に加え、種々の歌舞伎番付、役者評判記、台帳等にあたって年代考証をおこない、「どの演目のどの場面を描いたものか」までを特定。それぞれの役者絵について厳密な考証・検討を加え、成果をデータベースへ入力した。
・対象 初代歌川豊国の作品
・主な入力項目
画題(画中の文字)/役名・役者名/位置(並び順)/絵師名/版元印/版元名/
落款印章/彫師/改印(検閲印)/所蔵印/刊行年月・上演年月日/地域/劇場/
外題/外題よみ/場順/場名/所作題/所作題よみ/音曲の種類/系統分類/解説
・入力件数 約200件

(3) 役者絵研究会例会の開催
上記考証成果の報告・確認の場として、毎月1回、演劇博物館において例会を開催した。
2002年11月より2003年10月まで、2003年2月・3月を除いて、計10回開催、各回平均12名の会員が出席した。

(4) WEB公開用画像データベースの拡充
新規受入資料など80点の画像データを追加した。


2. 浄瑠璃稀曲データベース化の研究
(1) 内山美樹子教授収集義太夫節コレクションのデジタル音源の確認・分析・データ入力
・入力項目
 演目/場名・段名/演奏者/録音年月日/備考/編集指示
・入力数 CD−R約150枚

(2) 佐渡文弥節録音資料
・昭和47年採集資料の一部について、演劇博物館助手の田草川みずきが内容調査をおこない、「演劇研究センター紀要 I 」に「早稲田大学演劇博物館蔵 佐渡古浄瑠璃録音資料目録(1)」として報告した。

(3) 文弥節人形浄瑠璃の伝承比較研究
・2003年10月4日大隈講堂において「COE公開講座 文弥節人形浄瑠璃」を開催。鹿児島県東郷町と新潟県佐渡の人形座を招聘し、両座による「源氏烏帽子折」の公開上演、収録をおこなった。


3. デジタル・アーカイブ研究
3-1. 近代演劇上演記録データベース構築

同プロジェクトでは、演劇博物館所蔵の戦前(大正元年〜昭和15年頃まで)の上演資料を基に、上演記録データベースを構築することを目的とし、その基礎的作業として、2003年度はプログラム・ちらし等の上演資料について、年代・演目・劇場等のデータを中心に考証し、劇場ごと年代順に整理・分類した。また、整理・分類作業と並行して、データベースの基本項目についても検討した。 ・作業点数:約400点(概算)
・近代演劇上演記録データベースの基本項目(検討中)
上演主体IDno.・上演年・小番号(入力順)上演主体名・演目名・公演日・場所(よみ)作・演出(よみ)翻訳・脚色公演備考ちらし・プログラム・文書・チケット・ポスター・写真・台本・その他寄贈者名・入力者名その他

3-2. 現代能楽・狂言上演記録データベース構築

同プロジェクトでは、演劇博物館所蔵の現代(大正元年以降)の能楽・狂言に関する上演資料を基に、能・狂言上演記録データベースを構築することを目的とし、その基礎作業として、2003年度は数多ある演劇上演資料から能楽・狂言に関する上演資料を分類するための整理作業を行った。また、整理・分類作業と並行して、データベースの基本項目についても検討した。
・作業点数:約630点(内、能・狂言上演資料は約170点。概算)
・現代能楽・狂言上演記録データベースの基本項目(検討中)
能・狂言上演主体IDno.・上演年・小番号(入力順)
上演主体名・演目名・小書・公演日・場所(よみ)
シテ・ワキ・ツレ・アイ・アド・小アド(よみ)
笛・小鼓・大鼓・太鼓(よみ)
作者・よみ
流派・能/狂言
ちらし・番組・プログラム・文書・チケット・ポスター・写真・その他
寄贈者名・入力者名
その他

3-3. 検閲台本デジタル化

(1) 資料概要

資料概要については白川宣力『演劇博物館資料ものがたり』に詳しいが、その解説をふまえここであらためて簡単にまとめる。演劇博物館には戦前・戦中・戦後にまたがり時の為政者による検閲を受けた台本が多数所蔵されており、それらを「検閲台本」と総称している。本プロジェクトにおいて当面研究対象とするのは、ミシガン大学から1985年頃演劇博物館へ移管された総数約8,000点の「九州地方巡業劇団の検閲台本群」である。太平洋戦争直後のGHQによる検閲台本で、福岡市にあった第3地区検閲局に保管されていた検閲用台本の副本が、占領終了後にアメリカへ持ち運ばれ、その後ミシガン大学へ移送されたものである。ほとんどが罫紙にカーボン複写で、毛筆書きのものもある。一点数葉から数十葉で、表紙は罫紙あるいは厚紙をつけてあり、紐で簡単に綴じられている。紙質が粗悪で綴じも簡易なため劣化が進みつつある。内容的には地方巡業一座特有の股旅物、勧善懲悪的物語が大半であるが文芸物、歌舞伎、文楽、舞踊劇、博多仁和賀などもある。

(2) アーカイブ構築

アーカイブ構築の具体的な作業としては、まず第一段階として書誌データと原資料の照合を行い対象資料群の全体像が把握できるよう目録作成にとりかかった。一部未入力の資料については新規にデータ化を行った。演劇博物館での整理作業により、大方の書誌的情報はすでにデータ化済みで、項目は、県、市郡、外題、作者、脚色、劇団 ・演者、申請者、許可・不許可、時代種別、ジャンル、内容、年月日である。特定の劇団や当時の具体的な演劇状況など、あるいは項目の立て方やジャンル分けなどについて、棚町知彌氏(国文学研究資料館名誉教授)、宮田繁幸氏(東京文化財研究所芸能部民俗芸能室長)にそれぞれ協力を仰いでおり、これからさらにデータの信頼性が高まると思われる。

作業中に次第に明らかになってきた問題点としては、まず台本が許可とされたか不許可とされたかについて、判別が難しいことである。ほとんどの台本は検閲許可印および検閲官サインの部分が切り取られており、表紙に”OK”や”suppressed”といったメモ書きが残されていればよいが、それも無い場合、○に×印といった記号で判断しなければならない。検閲許可印部分が切り取られた経緯については今のところ不明であるが、棚町氏によると、「アメリカ本土へ向けて船便に載せるために梱包した際には切り取りは行われていなかった」。ただ幸い資料数が約8,000点以上と、まとまった数量であるため、メモ書きや記号はある程度類型化が可能と見込んでいる。
また別の問題として、「大衆演劇」、「新劇」、「歌舞伎」、「学生演劇」、「組合演劇」などのジャンル分けについては、若干恣意的である面が否めない。今後ジャンル項目については用語統制も含め再検討していく。
第二段階として目録データ作成に平行して台本全冊の表紙および検閲印部分などをデジタル撮影しており、約3,000冊まで撮影が完了した。表紙に内容情報が集中しているため現時点で全頁を撮影する必要はないと判断した。最終的に画像と書誌データを結びつけ、データベースとして演劇博物館/演劇研究センターWEBサイト上にオンライン公開する予定である。利用者はインターネットに接続した自分のPCで検索操作を行い、例えば県別、劇団別、ジャンル別などに抽出し、書誌的情報と表紙画像を並べて閲覧することが可能となる見込みである。

(3) 研究会




「占領期の演劇と検閲」
2003年10月28日(水)19:00〜20:30
早稲田大学西早稲田キャンパス6号館3階 レクチャールーム
講 師:棚町知彌氏(国文学研究資料館名誉教授)、
聞き手:宮田繁幸氏(東京文化財研究所芸能部民俗芸能室長)



「占領期の演劇と検閲」U
2003年11月28日(金)18:00〜19:30
早稲田大学西早稲田キャンパス6号館3階 レクチャールーム
講 師:ジェームズ・ブランドン氏(ハワイ大学演劇学部教授)



第3検閲局の開設当初から入局し、検閲局閉鎖の日まで勤務した経験を持つ、棚町知彌氏を講師に迎え、当時の状況などをお話いただく機会を設けた。聞き手は、演劇博物館所蔵検閲台本の体系的整理とデータベース化に最初に取り組まれた、宮田繁幸氏にお願いした。内容としては、棚町氏に当事のことをお話いただき、適宜聞き手から質問を挟むという形で行われた。若干20歳で入局され、最終的には日本人の中で最上位の職務となった事や、所管の最高責任者だった米軍将校との職務を離れた交流など、九州地区の演劇情報も含めお話は尽きず、当初予定していた終了時間を越える程だった。

更に氏は福岡検閲局が閉鎖・解散する時に作成した当時の職員名簿など、非常に貴重な原資料を多数持参され、参加者全員でその資料を回覧した。途中、理解を深める一助として、所蔵検閲台本の原本や作成途中のデータベースなども一部公開したが、削除や訂正の跡も生々しい実際の資料とあって、参加者の関心も高く、今後の利用や公開時期に関しての質問も多かった。平日の夕刻からにもかかわらず、大学院生を始め演劇以外の分野の方も参加され、質疑応答時には、検閲局での人種的な組織構成や、当時の一般的な政治志向と演劇との関係など、非常に専門的な質問が出され、研究対象としての「占領下時代」への関心の高さをあらためて実感した。

3-4. 東京新聞演劇記事データベース

演劇博物館には、昭和18年から平成10年までの東京新聞の演劇記事が原紙保存されている。しかし酸性紙である原紙は近年非常に劣化が進み、コピーなどの利用に耐えられなくなってきているのが現状である。そこで今回、COEのデジタルアーカイブ構築の一環として、これらの演劇記事をデータベース化し、さらに重要と思われる記事をピックアップして、個々のデータに画像を添付するという試みを始めた。(とっている項目としては年月日、演劇ジャンル、記事タイトル、劇団・個人名等である。なおテレビ番組欄に関しては、現在入力中の年代では、各種テレビ番組紹介雑誌が刊行されており、そこからも検索可能なため、特集・紹介記事のみのピックアップとしている。)

全ジャンルとなると1ヶ月分でも400件近くなる上、記事の線引きと入力にある程度の習熟も必要とあって意外に時間がかかり、現段階では6ヶ月分約2600件のデータを入力したところである。しかし、集積してみると芸能情報には定評のある東京新聞だけあって、小さな劇団の公演告知やそれに対する劇評など、他では得られない記事が載っているので、これからの近現代の演劇研究にとっては非常に有益な情報源になると思われる。
今年度は当面データ入力に専念し、来年度から実験的に画像の添付を開始しようと考えている。将来的には、演劇博物館収蔵のチラシ・パンフレットのデータベースともリンクさせ、より情報量を豊富にしてゆきたい。


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