早稲田大学 演劇博物館 演劇研究センター 21世紀COEプログラム 演劇の総合的研究と演劇学の確立
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年間活動報告 演劇理論研究(西洋/比較)

研究概要 活動報告 2002 2003 2004 2005 2006 2007
1. COE特別講座 成城大学教授・毛利三彌氏《演劇研究の世界的動向と演劇の近代》
(「西洋演劇特論」として、大学院文学研究科に設置。毎週木曜2限文学部31号館313教室)

日本演劇学会会長で北欧演劇研究の第一人者である毛利三彌氏を客員講師に迎え、前期は演劇史の文献を、後期は演劇理論の文献を講読しつつ、演劇研究の世界的動向について研究するとともに、イプセンを中心とする北欧演劇をとおして演劇の近代について考察している。 また、毛利氏には別途、特別研究生の博士論文執筆を指導していただいている。前期は5月31日(参加者全員による討議)と6月28日(報告者/村井華代、稲田奈緒美[COE舞踊グループ客員研究助手])、10月18日(報告者/平井一成)に行われ、特別研究生の研究発表と演劇研究の諸問題をめぐる活発な討議がなされた。11月29日(土)にも予定されており、14時40分から17時、36号館308号室の予定。


2. COE演劇論講座《各国演劇研究の最先端》
本コースには西洋/比較演劇研究を専門とする教員が多数所属しており、広範な地域・時代にわたる研究領域を広くカバーしえているが、学内にのみに閉じこもることなく、常にアンテナを外に向けて新しい研究の動向をキャッチすることは重要である。そこで主として欧米演劇を研究対象として国際的に活躍する著名な演劇研究者を講師に迎えて交替でご講義いただき、演劇の歴史と現在について理解を深めるとともに、最先端の演劇理論を研究している。日程は以下のとおり。(各回とも午後1時より4時10分まで。会場は文学部戸山キャンパス会議室。)


5月9日(金) 学習院大学教授・佐伯隆幸氏「フランス演劇最新情報I」〔39号館第7会議〕
5月30日(金) 同氏「フランス演劇最新情報II」〔第39号館7会議室〕
昨年度パリで約300本の演劇を観劇して帰国したばかりの佐伯隆幸氏を講師に迎え、フランス演劇のヴィヴィッドな最新情報を紹介していただくとともにフランス現代演劇が抱える問題点を豊富な具体例に基づいて提示していただき、討議を行った。

6月6日(金) 立教大学教授・宇野邦一氏「アルトー、演劇とはどんな実験なのか」〔33号館第2会議室〕
ドゥルーズの紹介者として知られ現代思想に造詣が深いのみならず、アルトーやベケットの専門家でもある宇野邦一氏を講師に迎え、二十世紀の演劇に多大なる影響を及ぼしたアルトーの《残酷演劇》や《器官なき身体》などの理論について、『演劇とその分身』を中心にご講義いただき、討議を行った。

6月27日(金) 東京外国語大学教授・谷川道子氏「“ポスト・ドラマ演劇”とハイナ―・ミュラーの位相I」〔第7会議室〕
7月2日(金) 同氏「“ポスト・ドラマ演劇”とハイナ―・ミュラーの位相II」〔第2会議室〕

ドイツ演劇研究で国際的に活躍する谷川道子氏を講師に迎え、ドイツの現代演劇の流れについて、初回はハイナー・ミュラーまでの状況論、2回目はその理論的考察とミュラー以降の演劇をめぐって、詳細な資料と豊富な映像を駆使しながら解説していただき、ドイツ演劇の現在について理解を深めるとともに現代演劇が抱える諸問題について考察した。

9月24日(金) Dr. Noreen Doody, University College, Dublin講演会《Oscar Wilde's Salome and French Symbolist Drama》 〔31号館313教室〕
招聘を予定していたDr. Declan Kiberd氏が病気により来日を中止したため、新進気鋭のDr. Noreen Doodyを迎えて、フランス象徴派がオスカー・ワイルドに与えた影響を『サロメ』を例にとりながら講演していただいた。色の持つシンボリックな意味など、Dr. Doodyならではのユニークな視点を提示していただき、討議を行った。

10月3日(金) 東京大学教授・大橋洋一氏「アダプテーション、オーサーシップ、ジェンダー
―シェイクスピア研究と演劇理論の現在 I」〔39号館第7会議室〕
10月10日(金) 同氏「アダプテーション、オーサーシップ、ジェンダー
―シェイクスピア研究と演劇理論の現在 II」〔39号館第7会議室〕

ジェンダー理論やポストコロニアル理論など現代の批評理論を駆使したシェイクスピア研究のほか、T・イーグルトンやエドワード・サイードの著作の翻訳・紹介、旺盛な批評活動で知られる、現在もっとも先鋭的な英文学者の一人である大橋洋一氏を講師に迎え、初回はシェイクスピア作品のアダプテーションとオリジナル神話の崩壊について、2回目はゲイ・レズビアン批評とクイア理論の差異を踏まえた上で、映画「グッバイ・ガール」を例にとりながらシェイクスピア研究におけるクイア批評の方法論について研究した。

10月24日(金) 立教大学教授・宇野邦一氏「ジュネとベケットは演劇に何をもたらしたか」〔39号館第7会議室〕
前期に続いてドゥルーズの紹介者として知られ現代思想に造詣が深いのみならず、ベケットやジュネの専門家でもある宇野邦一氏を講師に迎え、今回はサミュエル・ベケットとジャン・ジュネの演劇について研究した。ベケットについては、ベケットによるプルースト論を《時間》についての哲学であると捉え、ベルクソンの「感覚運動的図式」を援用しつつベケットの言う「習慣」について論じ、また、ドゥルーズによるベケット批評についても考察した。ジュネについては、《支配/被支配》の力学を《身振り》の系列に置換して骨抜きにするジュネの方法について研究した。

年度内に、以下の講座を予定している。
11月14日(金) 東京大学助教授・内野儀氏「アメリカ演劇研究の現在I」
11月21日(金) 同氏「アメリカ演劇研究の現在II」


アメリカ演劇研究の専門家としてアメリカのMIT Pressより刊行されている国際的な演劇研究誌TDRのcontributing editorの一人であるとともに、日本の現代演劇の批評活動でも知られる東京大学助教授・内野儀氏を迎え、アメリカ演劇研究の動向について研究する予定。


3. COE演劇論講座《舞台芸術の歴史と現状》+COEゼミ《博士論文執筆支援と演劇研究の方法論の探究》
本コースに所属する教員が中心となって、主として欧米における舞台芸術の歴史と現状について検証し、演劇学といういまだ確立されていない研究分野の可能性について探究する、または、文献読解等を通じて地域/語学の枠組みを超えて共通するテーマや問題点についてディスカッションを行ない、演劇研究の方法論を探究する講座である。さらに、特別研究生が博士論文執筆のための研究経過を報告し合い、各自の博士論文完成を目指している。


5月16日(金) 担当:岡室美奈子/長島確「ベケット/ドゥルーズ『消尽したもの』研究」〔31号館301教室〕
20世紀の演劇を変革したサミュエル・ベケットを専門とする岡室がベケット自身の演出による後期テレビ作品の映像資料を紹介・解説し、それを論じたジル・ドゥルーズの『消尽したもの』をめぐる長島の詳細な研究発表をもとに、今なおフランス現代思想の中核であるドゥルーズのベケット観とその周辺の諸問題をめぐって討議を行った。

6月20日(金) 担当:藤井慎太郎「フランス現代演劇と『女形』:文化と性の境界とその表象」〔31号館301教室〕
世田谷パブリックシアター、シアタートラムでの公演のために来日中であったフランスの劇団テアトル・デュ・タンで「女形」俳優として活躍しているオリヴィエ・ブライトマン氏をゲストに迎え、男優が女性の役を演じる伝統が中世において例外的に見られるのみであるフランスにおいて、日本の伝統を採り入れつつ「女形」を演じることの意味を考察した。

7月12日(土) 特別研究生博士論文テーマおよび執筆計画報告会〔本部キャンパス6号館318教室〕
COE助手の司会・進行により、COE特別研究生が各自の研究テーマや博士論文の進行状況について報告し、それに基づいて質疑応答と討議を行った。国や言語の異なる演劇を研究対象とする特別研究生同士が互いの研究について理解を深めるとともに、問題点を共有し、刺激し合う有意義な場となった。

今後の予定は以下のとおり。
10月31日(金) 担当:八木斉子
12月5日(金) 担当:桑野隆
12月12日(土) 特別研究生研究発表会
1月11日(土) 博士論文経過報告会

また、COE演劇研究センター・リーダーで演劇博物館館長である、伊藤洋教授の最終講義を予定している。


4. 外国語によるCOEゼミ
演劇研究における国際交流は、本コースが掲げる活動基盤のひとつであるが、そこで必要になるのが外国語による討論のスキルである。殊にアジア・アフリカ・欧米の研究者が一堂に会する国際的な学会では、多くの場合英語が公用となっており、どの分野を専門にするにしても、英語でのディスカッションが可能であることは、既に現代の研究者には前提となりつつある。しかし、演劇学に関しては国際交流の歴史が浅いこともあり、とりわけ外国文学・言語系の課程出身でない者にとっては、討論等を訓練する環境がほとんど整備されていなかった。また、主専門である国の言語には長けていても、英語は訓練していないというような「専門性による弊害」も小さくはない。そこで英国ルネサンス演劇を専門とする早稲田大学文学部Anthony Martin助教授によるゼミを設置し、英語で発表・討議を行っている。

前期はスケジュール調整の後、イントロダクションとしてA New history of early English drama / edited by John D. Cox and David Scott Kastan [New York : Columbia University Press, c1997] から16世紀イングランドの演劇状況を様々な角度から取り上げる論文三作を読み、知識基盤を共有した上で、そこからくみ上げられる問題を論じた。(場所は特に記入のない場合はマーティン研究室)

5月19日(月) 10:40−12:10  ガイダンス、出席希望者の要請等の確認
6月11日(水) 18:00−19:30  P. W. White, ""Theater and Religious Culture""〔31-308教室〕
6月23日(月) 15:30−17:00  G. Kipling, ""Wonderful Spectacles: Theater and Civic Culture""
7月07日(月) 15:30−17:00  G. Parry, “Entertainments at court”
7月14日(月) 15:30−17:00  前期内容に関するまとめ

後期は、毎回各出席者の研究テーマについて20?30分のスピーチを行っている。発表者は事前にマーティン教授にレジュメを提出し、自分のスピーチ内容に関するアドバイスを受けることができる。また終了後はスピーチ原稿を教授に提出、添削と指導を受ける。日程は以下のとおり。

10月 06日(月) 15:30−17:00  発表者:森本美樹「『オセロー』の娼婦について」
10月 20日(月) 17:40−19:10  発表者:多田茂史「S. Greenblattの死生観について」
11月 10日(月) 17:40−19:10  発表者:村井華代「エリザベス朝における演劇攻撃/擁護論争」
12月 01日(月) 17:40−19:10  発表者:中垣恒太郎(テーマ未定)
12月 15日(月) 17:40−19:10  発表者:未定


5. 特別講演会
舞踊研究コースと共催により、下記の特別講演会を開催した。

講演者 ガブリエレ・ブラントシュテッター
ベルリン自由大学教授
題 目 「歩行とダンス−動きの型−M.カニングハムからA.フーバー、その同時代の女性振付家たちまで」
日 時 2003年10月24日(金)17:00〜20:00
会 場 早稲田大学 国際会議場3F 第一会議室
司 会 秋葉裕一
通訳 長谷川悦朗(COE特別研究生)
アドヴァイザー 貫成人(専修大学教授)

ドイツ文学、身体論、舞踊研究、美学など、多彩な研究背景を持つブラントシュテッター教授を迎えて所属機関・専門の垣根を越えて多くの聴講者が集まり、想定時間を越える活発な質疑応答が交わされた。
尚、この講演の模様は、COEにおいて構築されたWEB会議システムを通じ、海外在住(イギリス・アメリカ)の客員研究助手にリアルタイムで発信された。


III. プロジェクト別活動報告
1. フランス古典劇の復元上演研究(担当:伊藤洋)

12月8日(月) 「17世紀朗唱法の研究方法」〔文学部〕
Rencontre avec des etudiants dans le seminaire de Monsieur Ito a la faculte des lettres de l’universite Waseda

12月9日(火) 「17世紀朗唱の実践と研究」〔早大演博COE研究会〕
Conference (autour de l’art de declamation, a preciser), organisee par COE

12月11日(木) 昼:COE研究会、夜:「17世紀古典劇の朗唱」〔早大演博COE研究会、日仏演劇協会との共催〕
Conference ≪ Theorie et Pratique de l’art de Declamation ≫, organisee par la Societe franco-japonaise de theatre, pour des chercheurs du Theatre Francais

12月13日(土) 「17世紀古典劇の朗読会」〔早大COE一般公開朗読会〕
Lecture-spectacle a deux voix, organise par COE


2. ヨーロッパの演劇博物館と日本演劇関係収蔵資料(担当:ギュンター・ツォーベル)
第1回会合:4月23日 18時15分 〜 20時 〔3号館 Zobel研究室〕
1. ドレスデン民族博物館日本コレクションへの学術協力(Zobelからの提案)
2. マイニンゲン演劇博物館との交流計画
3. 歴史的劇場建築に関する情報収集(長谷川からの提案)
4. 館報「世界の演劇博物館」への寄稿(丸本からの提案)
5. ドイツ演劇博物館館長会議への参加について、など

第2回会合:5月21日 18時15分 〜 20時 〔3号館 Zobel研究室〕
1. Meiningen演劇博物館からの連絡について
2. ドイツ演劇博物館館長会議への参加について
3. 日本演劇関連コレクションに対する研究協力について
4. 「神功皇后」船人形の調査について、など。

第3回会合:5月21日 18時15分 〜 20時 〔3号館 Zobel研究室〕
1. 10月31日にKolnで開催されるドイツ演劇博物館館長会議への参加について
2. 早稲田大学演劇博物館とマイニンゲン演劇博物館における交流記念コーナー設置の詳細
2.1 記念コーナーのデザイン
2.2 記念コーナー除幕式および能装束展開幕式への参加
3. 館報への寄稿について、など

第4回会合:9月29日 18時15分 〜 20時 〔3号館 Zobel研究室〕
1. Meiningen演劇博物館の交流記念コーナーについて
2.ドイツ演劇博物館館長会議への参加
3. 館報への寄稿について
4. 船人形の調査について、など


3. オペラ/音楽劇の演劇学的アプローチ(担当:丸本隆)
われわれは本プロジェクトの活動の中心を、毎月ほぼ一度のペースで開催される研究会に置いてきた。その際最初の数回を、日本と欧米におけるオペラ研究の現状や、オペラの演劇学的アプローチの可能性の考察に当てることによって、研究の方向性を定めたうえで、次のステップとして、オペラ誕生以降200年(17・18世紀)の英・独・仏・伊に対象を絞り、さまざまなテーマに関わる多角的な研究を進めてきた。来年度には、このような共同研究の成果を、何らかの形で公表したいと思っている。

第01回 01/20 年間計画打ち合わせ
第02回 02/13 今村「演劇学におけるオペラ/音楽劇研究の意義 ― C.バーム『演劇学入門』を手がかりに」
第03回 03/17 伊藤「日本におけるオペラ受容史 ― 幕末・明治時代」
第04回 04/08 森「日本におけるオペラ受容史 ― 大正時代以降」
第05回 05/06 丸本「オペラ/音楽劇の演劇学的アプローチの可能性を探る − 17、18世紀英独仏伊を対象に」
第06回 06/03 長谷川「ジングシュピールから国民的オペラへの「道」 ― ヒラー、シュヴァイツァー、ホルツバウアー」
第07回 06/24 森 「トラジェディ・リリックのメルヴェイユー ― リュリの『ペルセ』を中心に」
第08回 07/01 井口 「ヘンデルの歌劇《セルセ(クセルクセス)》について」
第09回 07/15 関根「18世紀のメロドラマ 概観とその研究の視点 − W. シンプフ『叙情的演劇 −18世紀のメロドラマ』を中心に」
第10回 07/29 濱野「ゲオルク・アントーン・ベンダと18世紀ドイツのゴータ・エクホーフ劇場」、清水「オペラにおける朗唱と身振り ―18世紀を中心に」
第11回 09/30 早崎「フリードリヒ大王の姉、作曲家ヴィルヘルミーネ・フォン・バイロイト」
第12回 10/28 森本「17世紀イギリスにおける演劇と音楽」
第13回 11/25 米田 「18世紀前半におけるイタリアのオペラ活動 ― ヴィヴァルディのオペラ活動を通して」
第14回 12/16 神尾「つまずくザラストロ、息切れするパパゲーノ ― ゲーテの『魔笛続編』から−」
※2004年1月以降の発表予定(太田「ペプシュ」、小島「音楽理論」、冬木「モンテヴェルディ/グルック」、八木「パーセル、弓削「女性歌手」)


4. 比較演劇研究(担当:秋葉裕一)
昨年、「池袋小劇場」代表の関きよし氏にお話を伺ったのに続き、本年10月8日には、『演劇の弁証法』の著者である武井昭夫氏(小川町企画主宰)を迎えてインタヴューを行ない、「戦後の新劇運動の中のブレヒト」をメインテーマに語っていただいた。年度内にあとお二方のインタビューを計画している。

また、現在、演劇博物館や中央図書館を中心に千田是也氏の寄贈された文書の整理作業が進んでいる。学芸員や司書の方々の一応の整理が終わった段階で、ブレヒト関連の文献について調査に入る予定である。明年度に計画されている千田文庫の公開に協力していきたい。

ブレヒト研究としては、ブレヒトの小説や詩のテキスト分析から、ブレヒト劇の構造や骨格を見定める作業を進めており、現在はブレヒトの短編小説「傷ついたソクラテス」を手がかりに、バラードや語り芝居の関連などを考察している。また、担当する授業「演劇論」(理工学部設置科目)あるいは「映像に現代を読む」(テーマカレッジ演習科目)などとも連携を図りつつ、ブレヒトやその影響下にある作家、作品の現代における受容のされ方などにも、注意を払っている。


5. 現代における西洋演劇の上演とその周辺
今年度、本プロジェクトでは舞台上演の条件の一要素としての翻訳に焦点を絞り、翻訳劇の上演に関して、『木の皿』(加藤健一事務所・5月)、『スリー・デイズ・オブ・レイン』(シアター21・7月)、『詩人の恋』(加藤健一事務所・9月)、『ニュルンベルク裁判』(ひょうご舞台芸術・10月)においてフィールドワークを行い、その報告を12月に予定。演出家鵜山仁氏の公開インタビューを11月に、俳優(未定)の公開インタビューを12月に予定している。


6. 演劇制度史研究
5/31-6/8 モントリオール市における国際演劇祭を藤井が視察し、ケベック州における分離独立主義政策の採用と、舞台芸術の発展との相関関係をめぐって、舞台芸術家に聞き取りを実施するとともに、資料収集をおこなった。
7/11
18:00-20:00
フランスにおける舞台芸術労働者(アンテルミタン)のストライキ・デモ活動が激化するという状況について、研究会(藤井研究室)にて、八木が報告、その上で意見交換をおこなった。
10/17
18:00-20:00
ベルギー人研究者サラ・ヤンセンを研究会(藤井研究室)に招き、フランダース地方における分離独立運動と文化政策の相関関係について報告を受け、意見交換をおこなった。
11/14-12/1 笹川日仏財団の助成により、フランスより演出家フレデリック・フィスバックと振付家ベルナルド・モンテを日本に招聘、早稲田大学においてもCOe主催の講演会を開催する。
11/20
14:40-17:50
「芸術に対する公的支援の発展とその限界 芸術家の視点から」と題して、フランスにおける芸術創造環境の昨今の変化と、とりわけアンテルミタンの労働運動について、講演会を実施。
12/4
18:00-19:30
11月の講演会の内容を受けて、研究会(藤井研究室)にて、フランスにおける俳優の地位の歴史的変遷と現状について八木が報告、意見交換をおこなう(予定)。

●成果発表
学会発表 藤井慎太郎「『屏風』とその他者たち」日本演劇学会大会(5月)
論文 八木雅子「アウトローから市民へ 俳優の人権宣言」COE紀要III号(掲載予定)


7. ベケットゼミ

第1回 2003年4月19日(土)13:00〜18:00 〔文学部キャンパス33号館1784号室〕
●発表者:島貫葉子 「ベケットの二言語使用と自己翻訳について」
二ヵ国語版存在するベケット作品のテクストはどう扱うべきなのか。二つのテクストは同一とみなしてよいのか。執筆順序(オリジナルと翻訳)、言語(母語と外国語)、ジャンル(小説あるいは戯曲)などの問題がかかわってくる。また、翻訳する際ベケットはどんな要素を優先したのか。そこから彼が文学において何を重視していたのかが見えてくるだろう。 ◎第1回である今回は参加者の自己紹介および今後の活動についての話し合いの後、戯曲『ゴドーを待ちながら』を題材とした上記の研究報告がおこなわれた。報告を受け、ベケットの二ヵ国語による創作にかんする一般的な問題から、作品に即したきわめて具体的・個別的な問題まで、多岐にわたる指摘や議論がなされた。

第2回 2003年5月17日(土)13:00〜18:00 〔6号館307号室(演劇研究センター助手室)〕
●共通テーマ 「戯曲『ゴドーを待ちながら』について」
1953年初演以来、さまざまな視点から研究がなされてきたベケットの代表作『ゴドーを待ちながら』。いままで語られてきたことをふまえ、この作品をこれからどのように論じていけるだろうか。一見語り尽くされた感のある本作品の再読を共通課題として、以下の発表がおこなわれた。
●古東祐美子 “Playing with hobby-horses while waiting for Godot”
●鈴木哲平 「物語世界からの遊離と虚構性の露呈の間に 〜『ゴドーを待ちながら』における「物語」の位置〜」
●鈴木美穂 「ゴドーの神格化と私物化 その上演と受容のあり方をめぐって」
●菊池慶子 「『ゴドーを待ちながら』における言語と非西洋の問題」
●島貫葉子 「ベケットの二言語使用と自己翻訳について(前回の続き)」
◎「脱線」を媒介としたスターンとの関連(古東)、フィクションの成立と「演じる」ことの問題(鈴木哲平)、上演にまつわる問題の諸相(鈴木美穂)、「中心」の欠落をとおした非(前)西洋演劇との接点(菊池)、二ヵ国語版の検討(島貫)などが報告され、またその他に、英語版におけるアイルランド方言の問題(岡室美奈子)や後期作品から溯る再解釈の可能性(長島確)等の指摘を加え、活発な議論が交わされた。

第3回 2003年6月14日(土)13:00〜18:00〔6号館307号室(演劇研究センター助手室)〕
●発表者:鈴木哲平 「「私」の言語的機能と「語りの技法」〜『モロイ』について〜」
ベケットの小説三部作は、語り手のアイデンティティーが崩壊していく過程を描く、というのが一般的な解釈だが、ベケットには、語り手の人物造形に先立って、「言葉の運動」とでもいうべき問題があったのではないか。また、「語り」といっても、小説における発話主体と戯曲における発話主体とのあいだに、あるいは「言葉」を紙の上に文字化すること(書くこと)と口に出して言うこと(語ること)とのあいだにちがいはないのか。
◎中期の代表作といえる小説三部作、とりわけその第一作『モロイ』の分析をとおして、登場人物(作中の語り手ないしは書き手)の主体性によるのではなく、話法ないしは書法それ自体によって導かれ構築される小説世界が考察された。人物が話法を決定するのではなく、逆に話法が人物を造形するという論旨を受けて、書くことと語ること、さらには読むことまでをも射程に含めた多様な問題が参加者の間で議論された。

第4回 2003年9月25日(土)13:00〜18:00〔6号館318号室(レクチャールーム)〕
●発表者:西村和泉 「ミクロメガテクスト−サミュエル・ベケット作品における内的意識の強度−」
作品を書いた後、自ら翻訳もするベケットにとって、先行言語(英語かフランス語かの選択)は創作にどう影響するのか。また、一般にベケット作品は、一貫した統一体としての「私」が分裂あるいは崩壊していく過程として解釈されているが、実はそもそも確固たる自己同一性を持った「私」は存在しないのではないか。そこに存在するのは、他者との区別があいまいな、複数の交換可能な「私」である。
◎初期の英語先行作品から中期の仏語先行作品への移行が、執筆/翻訳の順序をふまえた二ヵ国語版、さらには草稿の比較をとおして分析され、作品世界におけるマクロコスモスの壊乱とミクロコスモスの構築という構図が示された。ベケット作品に自己同一性の喪失のプロセスをみる通説を覆し、そこに主体の同一性とは別次元で変動し続けるポリフォニックなシステムの表出をみとめようとする刺激的な報告を受け、活発な質疑応答がおこなわれた。

第5回 2003年10月25日(土)13:00−18:00〔6号館307号室(演劇研究センター助手室)〕
●発表者:島貫葉子 「『ゴドーを待ちながら』について」
『ゴドーを待ちながら』を、ゴドーを待つ間、すなわち「最初のモノローグ」から「最後のモノローグ」までの間に、ヴラジーミルが「思考」できなくなる過程を描いたものと仮定すると、ヴラジーミルがそのような状況に追いやられるのはなぜなのか。そこに見えてくるのは、ヴラジーミルの直線的な時間意識の崩壊の構図である。
◎『ゴドー』英・仏二ヶ国語版の比較によって明確に浮かび上がる「思考する」ヴラジーミル像の変容を丹念に追った発表を受け、『ゴドー』に見られるクロノス的時間とアイオーン的時間の混在等の諸問題について深い論議がなされた。また、これまでの成果の中間報告として、鈴木美穂より「ベケットと音楽」について、長島確より「『あしおと』のト書きの問題点」について、鈴木哲平より「三部作における「介入する作者」と「読者」」、西村和泉より「ミクロメガテクストとしてのベケットの演劇」について、岡室美奈子より「ベケットとイェイツ」および「ベケットと別役実」について、それぞれ報告と問題提起がなされ、活発な意見交換がなされた。

上記のように、ベケット・ゼミでは毎回充実した研究発表と活発な討論がなされており、若手研究者が刺激し合う場として、また、博士論文執筆支援の場として機能している。成果として、2003年度COE紀要には4本の論文が掲載された。後期は引き続き月1回のペースでゼミを開催する予定である。



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