「演劇理論研究(東洋)コース」は、「中国演劇への演劇学的アプローチに関する基礎的研究」および「近現代中華文化圏の伝統演劇に関する基礎的研究」の二つのトピックを研究課題として設定し、2002年度後半から2003年度にかけて、国内外の研究者・実演者による講義、研究会などを複数回開催した。その詳細は以下の報告に述べる通りである。
1.国際研究集会 2003年3月に行われた国際研究集会「演劇研究の現在」には、台湾を代表する伝統演劇研究者の清華大学王安祈教授を招聘し、三日間にわたる講義、討論を行った。その詳細については、2003年度紀要掲載の国際研究集会報告、および王安祈教授の論文を参照していただきたい。
2.特別講義 2003年度には、大陸から来日した講師を複数お迎えし、計三回の特別講義を行っている。各特別講義の詳細は以下の通りである。
一、 講師:張中学(中国四川巴蜀芸術院院長・中国川劇学学会会長) 通訳:平林宣和(早稲田大学政治経済学部助教授)
講義タイトル「中国の劇団経営と興行の現状」 日時:2003年7月12日(土)15:00〜17:00 場所:早稲田大学西早稲田キャンパス14号館404号室
二、 講師:杜鵬(中国戯曲学院表演系主任)通訳無し 講義タイトル:「現代中国における伝統演劇俳優の養成」 日時:2003年9月17日(水)13:00〜14:30
場所:西早稲田キャンパス6号館3F演劇博物館レクチャールーム
三、 講師:張中学+川劇俳優二名(四川巴蜀芸術院) 通訳:李墨(早稲田大学演劇博物館助手) 講義タイトル:「川劇の演技術と俳優訓練」
日時:2003年10月20日(月)14:00〜15:30 場所:早稲田大学国際会議場共同研究室(1) 以上三回の特別講義の内容は、民間劇団の運営や現行の俳優養成システムなど、主に近現代の伝統演劇にかかわるトピックが中心となっており、これらはいずれも上述の「近現代中華文化圏の伝統演劇に関する基礎的研究」という研究課題に対応する形で開催されたものである。
3.21世紀COE文明戯研究会 中国の清朝末期に誕生し、後の話劇の母胎となりなつつ、また伝統演劇と話劇との中間形態として長らく存続した「文明戯」について、以下の研究発表を軸にCOE主催研究会を開催した。
日時:2004年1月11日(日)10:30〜17:00 場所:早稲田大学国際会議場共同研究室(7)
飯塚 容(中央大学) 「文明戯『ナポレオン』の周辺」
瀬戸 宏(摂南大学) 「新劇・文明戯・通俗話劇・早期話劇」
千田大介(慶応大学) 「京劇上演記録データベース」デモンストレーション
平林宣和(早稲田大学) 「清末上海の演劇をめぐる言説と環境(1904〜1911)」
三須祐介(広島経済大学) 「文明戯と申曲の関わり」
松浦恒雄(大阪市立大学) 「民国初年の劇談、劇評」
本研究会には関東圏、関西圏の中堅、若手の話劇研究者、伝統演劇研究者、古典戯曲研究者計17名が集い、上述のテーマを巡って密度の濃い討論がなされた。
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